育児と仕事のお役立ちコラム

2024年11月21日

知らないと損する、育休・産休制度

  • 子育て支援制度
  • 産休育休
  • #育休・産休制度

子どもを育てながら仕事を続けることは大変です。乳幼児の育児を行いながらであれば、なおさらでしょう。育児と家庭の両立が図ることができず、やむなく離職に至る方も多くいらっしゃいます。そのような事態を防ぐために、育休や産休の制度が用意されています。

そもそも育休・産休制度ってなに?

当記事では、育休・産休の基本制度について解説を行っています。名前は知っているが、内容は良くわからないという方は、是非参考としてください。

「育休」と「産休」は混同される場合もありますが、全く別の制度です。育休は、「育児休業」の略であり、産休は「産前産後休業」を略した言葉です。いずれも子育てを支援し、家庭と仕事の両立を図るための制度であることに違いはありません。しかし、両者の制度内容や対象者は異なります。次項より両者の制度内容や、対象者について項目を分けて解説を行います。

育休とは?

育児休業は、原則として子どもが1歳に達する日(誕生日の前日)まで休業できる国の設けた制度です。条件を満たした労働者には、育児休業期間中に「育児休業給付金」が支給されることも特徴です。また、良く似た言葉として、「育児休暇」が存在しますが、こちらは企業が独自に設けている制度であり、育児休業とは異なります。


育休の対象者

育休の対象者は、1歳未満の子どもを養育する労働者です。正社員はもちろん、パートやアルバイトも条件を満たす限り取得できます。また、女性だけでなく男性従業員も育休を取得することが可能です。ただし、期間を定めて雇用されている有期雇用労働者の場合には、以下の条件を満たさなければ育休は取得できません。

  • 子が1歳6か月(2歳までの休業の場合は2歳)を経過する日までに、労働契約の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

以前は、引き続き1年以上雇用されていることが、有期雇用労働者の育休取得の条件となっていましたが、改正により撤廃されています。


育休の期間

既に述べた通り、育休の期間は子どもが1歳に達する日までです。しかし、これは原則であり、保育所に入所できない場合などには、1歳6か月(1歳6か月までに入所できなければ2歳)まで期間の延長が認められています。なお、この場合には育児休業給付金の受給期間も延長されます。

通常の育児休業のほかにも、両親がともに育児休業を取得する場合に、1歳2か月まで育児休業が取得できる「パパ・ママ育休プラス」と呼ばれる制度が存在します。また、28日を限度に2回まで分割取得可能な「産後パパ育休(出生時育児休業)」などの制度も存在するため、家庭と仕事の両立に役立てましょう。


育児休業給付金

育児休業給付金は、原則として無給となる育児休業中の生活を支える制度です。給付金の支給によって、安心して育児に専念することが可能となります。育児休業と同様に男女問わず、受給可能ですが、以下の条件を満たすことが必要です。

  • 雇用保険の加入者である
  • 過去2年間で、就業日数が11日以上の月が12か月以上ある
  • 育児休業期間中に、休業前賃金の80%以上にあたる賃金が支払われていない
  • 育児休業期間中に、就業した日数が月10日以下である

育児休業給付金の支給期間は、原則として養育する子どもが、1歳になる日の前日(1歳の誕生日の前々日)までです。支給額は以下の通りです。

  • 休業開始から180日目まで

休業開始時賃金日額×支給日数×67%

  • 休業開始から181日目以降

休業開始時賃金日額×支給日数×50%

休業開始時賃金日額は、休業を開始する前6か月間の総支給額を180で除した額となります。なお、産後パパ育休を取得した場合には、通常の育児休業給付金とは別に「出生時育児休業給付金」が支給されます。



産休とは?

産休は、「産前休業」と「産後休業」から構成される休業制度です。育児休業と同様に国による法定の制度となっており、期間中は健康保険から「出産手当金」が支給されます。


産休の対象者

産休は、働く女性であれば誰でも無条件で取得可能な制度です。そのため、パートやアルバイトであっても、無条件で同制度を利用できることになります。また、育児休業のような有期雇用労働者の制限もありません。「そのような規定はない」「人手が足りないから」などと産休の利用を断られた場合には、労働基準監督署等に相談しましょう。


産休の期間

産休は、産前休業と産後休業から構成された制度です。産前休業は、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から取得可能ですが、労働者からの申し出が必要となります。なお、実際の出産日が予定日よりも遅れた場合には、その分の日数も産前休業期間に含まれます。

一方で、産後休業の制度では産後8週間は労働者からの申し出を問わず、女性労働者を就業させてはなりません。ただし、産後6週間を経過し、女性労働者が請求した場合には医師によって支障がないと認められた業務に就かせることが可能です。なお、出産日が予定日より遅れた場合には、実際の出産日を基準として産後休業の期間が計算されます。



出産手当金

出産手当金とは、収入が低下する産休期間中の生活を保障するために支給される手当金です。標準報酬月額を基に支給額が決定されますが、おおむね給与の30分の1相当額の3分の2程度が支給されると考えておけば良いでしょう。支給の対象となるためには、原則として勤務先の健康保険に加入していることが必要です。そのため、国民健康保険加入者には支給されません。



転職や退職時の注意点

育児休業や産休は、便利な制度ですが転職時等には注意しなければならない点も存在します。転職や退職時における制度利用の注意点を解説します。


退職後は利用できない

育児休業や産休は、企業等で働く労働者のための制度です。そのため、退職後は制度を利用することはできません。また、労働者のための制度であるため、自営業者やその妻なども制度を利用できないことを覚えておきましょう。


転職直後は制度を利用できない場合がある

妊娠中や子育て中であっても、転職は自由に行うことが可能です。そのため、子育て中に転職をする場合もあるでしょう。ただし、そのような場合には注意が必要です。

既に解説した通り、育休取得に際しての「1年以上の継続雇用」の条件は撤廃されました。しかし、労使協定を締結することで、以下の者を育児休業の対象から除外することが可能となっています。

  • 入社後1年を経過しない者
  • 申し出の日から1年以内に、退職や契約更新をしないことが決定している者
  • 週の所定労働日数が、2日以下の者

上記のように除外対象者を定めることが可能となっているため、転職直後は育児休業を取得できない場合もあります。転職先の就業規則等を確認しておくことが必要です。ただし、産休については、労使協定による除外は認められないため、転職直後であっても取得可能となっています。「入社してすぐは取得できない」などと、会社から言われる場合もありますが、そのような対応は認められません。


退職予定者

産休は、復職を前提とした制度ではありません。そのため、退職を予定している労働者であっても、無条件で産休を利用可能です。一方で、育休については復職を前提とした制度であるため、退職予定者の場合には育児が取得できない場合があります。申し出から1年以内に、退職や契約更新をしないことが決定している場合には、労使協定によって除外できるからです。退職予定であれば、会社の就業規則等を確認しておいた方が良いでしょう。なお、育休明けや産休明けであっても、退職の自由は保障されているため、休業後の退職自体は何ら問題ありません。



制度を理解し活用しよう


育児と仕事を頑張るママ

育休や産休は、家庭と仕事の両立を図るために欠かせない制度です。しかし、その制度は複雑で、理解が難しいことも事実となります。自分が制度を利用できるか不安があれば、当記事を参考とするだけでなく、子育て世帯専門の人材紹介サービスへ相談することも検討してみると良いでしょう。専門的知見を有するスタッフから、親身に相談に乗ってもらえるはずです。

監修:社会保険労務士 涌井好文