育児と仕事のお役立ちコラム
2025年7月15日
最近の30代はどんな働き方求める?

ワークライフバランス・ジョブシェアの現在地
近年、働き方に対する価値観が大きく変化している。特に30代女性の間では、単なるキャリアアップだけでなく、「生活と両立できる働き方」や「自分らしさを活かせる職場環境」を求める声が高まっている。本稿では、現代の30代女性がどのような働き方を望んでいるのか、ワークライフバランスやジョブシェアの動向に注目しながら探っていきたい。
■ 働く30代女性の現実
30代は、ライフイベントと仕事が交錯する時期である。結婚、出産、育児、介護、キャリアの転機——人生の大きな分岐点が集中して訪れる世代だ。特に女性にとっては、家庭と仕事の両立という課題がより鮮明になる。フルタイムで働きながら家事育児を担う「ワンオペ育児」や、「時短勤務によるキャリア制限」など、現代社会のひずみを実感する女性も少なくない。
一方で、かつてよりも「夫婦共働き」が当たり前になった今、女性も「家計の柱」として期待される場面が増えている。育児休業制度や時短勤務制度など法的支援も整いつつあるが、現実とのギャップは依然として大きい。
■ ワークライフバランスの再定義
かつて「バリキャリ」か「専業主婦」かの二択を迫られていた時代は過ぎ去った。いま30代女性が求めているのは、「どちらか」ではなく「どちらも」を叶える働き方である。そこで注目されているのが「ワークライフバランス」だ。
ここで大切なのは、ワークライフバランスが単に「労働時間の短縮」や「休みが取りやすい制度」だけを意味するものではないという点だ。多くの30代女性にとって、それは「自分の価値観に沿った生活を実現できる働き方」を意味している。仕事が生活を圧迫するのではなく、生活の一部として自然に共存すること。たとえば、朝は子どもを保育園に送り、その後リモートワークで集中して働き、夕方には家族と食卓を囲む——そんな1日を理想とする声が多い。
また、「キャリア一辺倒ではなく、プライベートの時間も大切にしたい」という意識が強まっており、職場選びの基準として「柔軟性」や「理解のある上司・同僚」「リモート可」「副業OK」といった条件が重視されるようになっている。
■ ジョブシェアという新しい選択肢
ワークライフバランスを追求する上で、最近注目を集めているのが「ジョブシェア(仕事の分担制)」だ。ジョブシェアとは、1つの職務を複数人で分担する働き方であり、欧米ではすでに広く取り入れられている。日本でも子育て中の社員や介護を担う世代、セミリタイア層など、さまざまなライフステージの人々にとって合理的な働き方として関心が高まっている。
ジョブシェアの最大の利点は、「短時間労働でも専門性を活かした仕事に関われる」点にある。通常、フルタイム前提で設計されている職務でも、2人で役割分担することで業務を継続できる。これにより、育児や介護と並行しながらもキャリアを維持することが可能になる。
また、仕事を共有することで、チームワークや協働スキルが自然と養われるため、「ひとりで抱え込まない働き方」として精神的な負担軽減にもつながる。30代女性にとって、これは「仕事を諦めずに続けられる」ための大きな武器となり得る。
■ 企業側の意識改革が鍵
とはいえ、ジョブシェアを導入するには企業側の理解と制度設計が不可欠である。日本ではまだ「正社員=フルタイム勤務」という価値観が根強く、「時短勤務=戦力外」のような風潮が残る企業もある。
しかし近年、少子高齢化による人材不足を背景に、企業も変化を迫られている。多様な人材が柔軟に働ける環境を整備しなければ、優秀な人材を確保できない時代が到来している。だからこそ、これからの企業は「働く人の人生設計に寄り添えるかどうか」が問われる。
先進的な企業では、ジョブシェアの導入やリモートワーク制度、時短正社員制度、副業解禁など、柔軟な働き方を実現するための取り組みが進んでいる。これらは単なる「福利厚生」ではなく、「経営戦略の一環」として取り組む必要があるのだ。
■ 「自分らしく働く」がスタンダードに
30代女性が求める働き方は、一言で言えば「自分らしく働けること」に尽きる。収入、キャリア、家族との時間、健康、趣味——それぞれの要素がバランスよく調和し、自分が納得できる人生を送れる働き方が理想とされている。
そのためには、「ライフステージに応じた選択肢」が必要だ。たとえば、子どもが小さい時期は週3日勤務でジョブシェアを活用し、小学校入学後は時短正社員に戻る。さらに、成長に合わせてフルタイム勤務にシフトしていくといった柔軟なステップが描ければ、女性たちも安心してキャリアを継続できる。
また、「働くことの意味」そのものを見直す人も増えている。仕事とは、単なる収入源ではなく、「社会とのつながり」や「自己実現の場」としての意味を持ち始めている。だからこそ、職場の文化や人間関係、働きがいといった「質」の部分が重視されるようになっている。
■ 社会全体の意識をアップデートする
女性の働き方は、もはや女性だけの問題ではない。男性の育休取得やフレックスタイム活用など、「性別を問わず多様な働き方を許容する社会」へとシフトしていく必要がある。30代女性の声は、その変革を後押しするリアルな現場の声であり、未来を見据えたヒントでもある。
そのためには、個人だけでなく社会全体が「働き方の多様性」を受け入れるマインドにアップデートされなければならない。柔軟な働き方を選べるようにすることは、単なる福祉政策ではなく、経済や社会を持続させるための必然である。
■ まとめ:選べる社会をつくるために
現代の30代女性が求めているのは、「我慢して働く」ことでも「専業主婦に戻る」ことでもない。「仕事と家庭を両立しながら、自分らしくいられる環境」である。ワークライフバランスの充実や、ジョブシェアの活用といった選択肢が増えることで、人生設計における自由度も高まり、結果として社会全体の活力にもつながる。
選べる働き方。選べる人生。そんな社会の実現に向けて、今こそ私たちは「働き方改革」を本当の意味で問い直す時に来ているのかもしれない。